― ヴァルハラ:市内 ―
[愛機は、市街地のやや外側に置いてきた。
ヴァルハラの市街地は、軍事や工事用大型パワードスーツが入れるよう、スケールがやや大きめに作られている。
自身の機体も市街地に入れられない訳ではないが、和平条約で浮つく街に傭兵の機体を入れる訳にも行かないだろう。大変わかりやすく重火器がぶら下がっている。
結果、市街地を生身で歩くことになるが、護身用の武器と傭兵ライセンスぐらいは持ってきた。何もないよりはマシであるからして。
久しぶりに、他者が作った暖かい食事が食いたい。
レーションやレトルトではない、マシな料理を胃に入れたい。
ジャケットを羽織り、傷のある男は飲食店を物色する。
そこに知った顔というか、死んだかと思っていた顔があれば、慌てて駆け寄るのだ。
他人の空似ではないことを祈って。]
『……ザッ、青年?』
[忘れようがない赤毛を見つければ、安堵と共に笑むのだ。**]