間話/ふわふわのふわふわたる所以
[羊塔監シリーズは全艦が一見するとふわふわの塊である。
そのふわふわは、成形途中のプラスチックがそのままに対流し、滞留し、即座に対敵装備を作成することができるナノウェアを混ぜ込んだ高性能ふわふわだ。
そうしてそのふわふわで人間を包めば、即座に呼吸を阻害し対流で分解用ハッチに飲み込む大量殺戮兵器でもある。
遠目で見れば可愛らしい補給艦であるが、狩るのにはハイリスクハイリターン。その身に呑み込んだ人間は数知れず。
そんなふわふわにも弱点は存在する。
ひとつは、脳内チップによって設定された擬似人格。
翼を持つ機械を慈しみ、守ろうと考える慈母の如き性格は、時に極端な過保護指向へとなり、時に天使達を自らの身で持って助けようと動き出す。
ひとつは、補給艦ということそのものに存在する弱点。
胎内に抱える小工場からは時に爆弾性を持つデイジー達が飛び出していく。それを狙撃されて膝を折る羊塔監シリーズは少なくない。空間防壁を備えていようと、内部を狂わされればそれが簡単に致命傷になり得る。
そんな弱点を抱えるがために、ハイリスクハイリターン。
悪魔達と対峙する迷える子羊は、常に狩られる危険性と隣り合わせである]*