[当然、目の前の彼――行平もそうだ。いくつもの作品で目にしているとはいえ、やはり一番印象的なのは『錠の輪』だ。別人だった。>>153分かっていたのに、叩きつけられた気がした。すごい、すごい。うまい、こわい、たのしい!新人とはいえ、根岸も彼と同じ演者である。"幸阪結月"に似合わない感情は決して表に出さない。肩が震えてしまったのは根岸の落ち度であるが、いっそそれすらも利用してしまおうと小さく息を吸った。]