>>203ジズ
[特に自分から人間に声を掛けるでもなく、ただ何をするのか分かりやすいように札を置いているだけだったが。それでも物珍しさでやって来た人間は居た。
和装という出で立ちが目を引くのも有り、祭りで浮かれ財布の紐も軽く。冷やかし程度で済む金額なら見てもらおうと思う者もそこそこは居るのだ。
人間達がやって来れば、それなりの対応はした。適当にするという事が出来ない質だからだ。
本気で稼ぐつもりもなかったので、幾人か視た後に店じまいをしようと思い。片付けようと札に手を伸ばす。]
…氷り草か。珍しい。
[風と共に流れてきた冷気の方角に視線を向け、そう零した。
それを持っていたのは噴水の脇を通り抜けようとする一人の女だ。]
……………。
そこの女。どうだ?視てやろうか?
[商売をする気があると思えない言葉を発する。
気まぐれについ言ってしまった。
祭りの雰囲気にそぐわない、暗く淀んだエネルギーを抱えているのがつい目についてしまったからだ。]