[ケンチクが銃を構えながら看守と対峙している様子に思わず顔を引っ込める。
状況は最悪だった。拘束具は完全に外れず、両者共に銃を持っているので撃ち合いは避けられない。
幸いなのは、ケンチクの威嚇行為のお陰で私の存在は看守にばれておらず、意識もそちらに向いていた事。
何時どちらが発砲してもおかしくない状況。
ケンチクが先手を取って無力化できればいいが、もしそうでなければ──。
私は首を振り、頭を高速で回転させる。一瞬だけでも看守の視線が逸れれば……と逡巡した時に手元にある野菜が目に入る。
私はさっと身を翻すとバリケードの反対側から機会を伺った。
看守は完全にケンチクの様子に勝利を確信した様子で「今投降するなら命だけは助けてやるぞ」なんて事を言っていた。
そんなやり取りが終わって銃撃戦が始まってしまう前に、私は空に向けて野菜を思い切り放り投げた。]