―裏通りにて―
[宴も酣。宿の明りが消え始める頃、カモフラージュのために買ってきた野菜袋を片手に自室へと向かう。
警戒は絶やさず、しかし遅い帰宅をどう言い訳しようかと思いを巡らせていると――
なにやら慌ただしい声が小さく響いた>>173。物音に耳を澄ませると、どうやら男性が物盗りに遭ったようだった。しかし当の本人は執着が無い様子>>183。
よく見る光景……という訳では特になかったが、気にするほどの事でもないか……と意識を外す直前。]
あれ……どこかで見覚えが……あ、お客さんだ。
[時折来てはお酒を調子よく呑んでいく、いつも愚痴でいっぱいだけどいつでも楽しそうにお話をしているお客さん。そんな彼の寂しそうな顔を見て、その視線の先を追い、白い花を見せびらかすスラムの子供たちを見て。]
……ああ、そういうこと。
[今は見るからに機械な腕が付いてるし、仮に腕が人仕様でも普段は人間の少女であるアリシアが花を取り返すことなど出来るはずもない。
見てしまったことをお客さんに心の中でそっと謝ると、踵を返し、回り道をしてこっそりと自室に戻る。
そういえば、あの一緒にいた人は……若そうに見えたけど、こんな時間に外にいるなんて一体何をしているのかしら。彼が今度お店に来たら聞いてみよう、と心に留める。**]