[こうして、所属組織を問わず大盛況の「ジョン・ドウ」展示会で、件の機体に関するデータをどうにか(「どうにか」という言葉が浮かぶほどの混雑ぶりだった)収集してから。
「シンギュラリティ」に“私”を奪われていた女は、ここでふと、別件のことを思い起こす。
思い起こしたのは丁度、機材の山に埋もれた作業者>>164の姿を視界に捉えた時だったが――]
おじさま、 ………………
[問おう。果たしてこの熱気立ち込める多忙と思しきフィジシャン>>165に、個人的な頼み事を一つ投げるべきか。
飲みかけのボトルに加え、胸元を大きく開けている様は、内部の熱暴走への対処と思しきもの。序にいえば汗臭い。
それだけのエネルギーを要している男に対し、この時手ぶらで訪れていた女は、一旦そっとその場を後にした。]