[……さて、思わぬ形での情報漏洩に不意にツッコミを入れる形での老婆心ではあったが。
仮にこの「少年」が常日頃思考駄々洩れの機体だったならば、流石にこの5年間のうちにソル・ブラッドサンの地位や生命に深刻な影響を及ぼしていただろう……とそこまではこの女にも思考できた筈だ>>199。筈だったのだ。それでも言わずにはいられなかったというエラー寸前の事態である。
この機械の女のCPU状況も実は大分危うい領域にあったのかもしれない。その意味では、今の目の前の相手の様相をとやかく言える義理になかった、かも、しれない。
ともあれ、「殺せ」だの「何が望みだ」だの「カネか」だの「情報か」だの、誇り高き戦士なのか小悪党なのかよく判らない交渉>>200を前に、オクリビは無表情で相手を見つめたまま、暫し静止する。
「石ころ女」の語が出てきた時に、少しだけ思考浮かばせながら]
まず、私は貴方を殺しはしません。
手ぬるい小娘とでも思っていただいて結構です。
[「恥ずかしくて死ぬ」の観点から言えば寧ろ手ぬるくないのでは、という思考はこの時の女にはなかった。]