[そんな「先輩」の涙も、今一度その人に向きなおった際に、ツバサ様を模した緑色の目は見てしまいました。>>198
見られたくなかった「格好悪さ」とはこのことだったのかと思いながら、それをここで言葉にすることないまま、その「格好悪い」顔を隠すのをやめたその人の「告白」に耳を傾けました。
ただただ自分のペースで、自分本位に、心のままに言葉を吐き出す。>>199
人間からの吐露を穏やかに聞き遂げる経験は、白薔薇にとって初めてではありません。
ええ、いつの頃からか、理音も白薔薇に対して言葉を直接声に出すようになっていたのです。
そして、「告白」を終えたその人の焦点合わぬ瞳を見守っていた時の白薔薇も、至って穏やかな面持ちを保っていたのですが……。>>200
そんな穏やかな平静が僅かに崩れた顔を「先輩」の前で呈してしまいましたが、白薔薇は特にそのことを気にはしませんでした。>>201
己を赦していいという安堵でありながら、悲しさにも近い心の震えも伴う。このような複雑な感情が、白薔薇にも生じていたのですね。]