[自分の情報と他者の情報の間にくっきりとした線を引き、自我データの箱を堅牢に。
数字の逆流から発狂しないよう、幾つも予備の壁を組み立てる。
わたしはわたし、あなたはあなた。
わたしと言う人間の意識はここに1つだけ。
そうして意識のリンクを情報の海から切り離す。
完全ログアウトまでは行かないが、脳の思考領域ぐらいはリアル世界に戻って来ただろう。]
――嗚呼、アリシアか
[思考の靄が晴れれば、ようやく相手の名を呼ぶ。
返せたのは寝ぼけたような曖昧な返事。
頭の中は膨大な情報の海を彷徨い、肝心の肉体管理はおざなりに。殺し合いの場であれば即死んでいるような無防備な姿は彼女の目にはどう映っただろうか。
今度こそ金髪の小さなシルエットを目でしっかりと捉え、柔らかに微笑む。]