[さて、ヒトの顔色を察せない世間知らずの妖精でも、ギタリストの指のタコや爪の切り方・伸ばし方や磨き方は、星月のバーバチカのギタリストの“ドウジ”らの手から学んできていました。]
もしかして君、ギターやってる?
[……なんて小さな呟きは、この文化祭の賑わいの中で聞き拾えたでしょうか?
目の前の女子学生の手の具体的にどこを指してそう判断したかは兎も角、志真はノーメイクの両目をさらしたまま、そう呟いていたものでした。
(舞台上やメディア上ではきちんとそれなりに耽美なアイメイクをしていますが……「今時のバンドマン」の例に漏れず、シマもすっぴんを動画やSNS上でさらすことはあったのです……)
……つい相手の手指のほうに気を取られてしまっていた志真は、目の前の小雪がバンドのブレイク前から曲を聞いてくれていた人だったということにまでは感づいていませんでした。
彼女はライブに来たことが無く、それ故にこちらからは顔も知らない相手だったのだから、当然といえば当然ではあったのですが……。>>176>>191>>192]