― 回想:処刑された兄 ―
[機械により己の兄が罪を犯したと処刑されたのは
先王ではなく、今の王の時代だったように思う。
そうではなくとも、少なくとも代理ではあったのだろう。
先王の顔はもう、記憶の彼方の朧である。>>94
国民全てを愛する王とはいえ、余程近しくなければ
其の1人1人まで遍く覚えているというわけではないのだろう。
商業集落から城下町へ、ガラクタめいたものから
城下や城で暮らす面々の利便的な生活を支えるための
アーティファクト……科学の残滓を残したものを
反逆者の汚名を浴びせられ処刑された者の身内の己が
襲撃され併合された商業集落の民の1人
所謂一応国民の端っこの方、として。見られるわけもあるまい。
気まぐれに資材を売りに来る、白髪交じりの黒髪の卸売りの1人であり、己はただの有象無象。]