ああ、いいんだ。
[胸を貸している相手にはこちらの頷きは見えませんから、「先輩」には声に出してこう伝えました。>>203
胸元の薄手のニットが涙に濡れる感触にも、白薔薇は何も言わず、ただ抱きしめた背中を擦ります。そしてツバサ様の優しさに倣う形で告げた感謝に零された嗚咽も、白薔薇は静かに受け止めました。>>204
……たとえ「どういたしまして」の言葉がなくとも、この感謝が今度はちゃんと「先輩」に受け止められたのだと、抱きついてきたその人の想いから白薔薇は思いました。]
……良かった。
[「先輩」がまだ胸の中で子どものように泣き続けているうちから、ふっと白薔薇はこう零していました。
理音にとって大切な「仲間」だった彼が取り落としていた未練の存在が、白薔薇にとっても新たな未練になっていたところでしたから。
その人の未練が満たされたような想いを感じ取った時に、白薔薇にも、心融けるような安堵が過っていたのです。]