……ああ、箸か?
育ての親に教えてもらったんだ。意外だろうか?
[親しげに話しかけてくる年上の男。
やや当惑しながらも、几帳面に食べ進んだ。]
[うまかろうとまずかろうと。
食料は食べればいつかなくなってしまう。
……神妙な手付きで箸を置く。
お代わりがないことに少しだけ悲しそうな顔をすると、
卓上の紙ナプキンで口の周りを拭き上げ、
仕上げにその紙ナプキン自体も口の中に放り込んだ。]
ケンチク、と言ったか。噂は本当なのだろうか。
所長の不在。それに乗じて、ここから出ようとする者がいる、と。
彼らはどこに行くのだろうか。あなたも、そうなのか?
青空の下、どこに行きたいかがもう決まっているなら。
それは素敵なことだな。
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