[女将は、地面に突っ伏したせいでずぶ濡れだった彼に、
タオルの一つでも渡してくれただろう。
そして柔らかく、慈しむような声で
この場所についての説明をしてくれた>>1
ここが死後の世界であること…生前の汚れや疲れを取るところ…そして、こころをいやすためのところである、ということも]
……うそ、だろう。
じゃあ、じゃあ僕は…ミミちゃんだけでなく…
自分自身さえ喪ってしまったのか…!?
ぼくの、この愛は…ミミちゃんのための愛は
どこにいったら…どうしたら…!
[……頭を抱え苦悩する彼に対して、
女将が差し出したのは木の札のついた鍵とおみかん。
札には、ハートに矢が刺さったかのような模様が記されており、
ほんのり焼け焦げたような良い香りがした。]