― 春・五月/校舎前花壇 ―
[パンジーが咲いていた。赤、青、黄、紫、白、橙。>>116
等間隔に並んで鮮やかな顔を覗かせていたそこには、
まだ犯行>>122の痕跡が残っていたか。
あるいは本人の申し出>>171が成り、
誤解がとける場面>>182が見られただろうか。
上階の目撃者は彼らのやりとりなど知らぬまま、
帰り道ですよと言った様子で花壇に近寄り、しゃがみこむ。]
……。
[年に二回のコンクールに必ず出展していた訳ではない。
ただ描けばいいというものでもないからだ。
テーマに沿って、審査員の好みも考慮して。
技量だけでひとつの作品が完成するなんてことはない。
だから、結月はいつも題材を探すように外を見ていた。]