[朝起きると、カーテンが閉められたままの家は静まり返っており、部屋の隅を見れば、スーツケースは持ち帰ったまま開かれてもいなかった。
何もしたくなかった。結局未だに全部なかったことにしたかったのだ。
その休暇はとうとうベッドから出ずに終わり、休み明けは再び職場に出たものの、明らかにぼんやりすることが増えていった自分は、職場の方から休暇の選択肢を迫られたのだった。
辞めるにしても、迷惑を掛けない辞め方をする。
そう伝えて長期の休暇に入った自分は、ゆっくりと、家のものに手を付けていった。
ゆっくりとスーツケースの中身を、形見を、手紙を丁寧に整理して、いくつもの夜を泣きながら、それでも独りで乗り越えていった。
命石は、真鍮細工で石を包むように囲い、ネックレス…というよりは、胸元に下がるようなペンダントの形にしてもらった。
そして、1か月ほどかけて様々な物を整理して、綺麗になった静かな部屋でさらに1週間ほど過ごした後、自分は部屋に鍵を掛け、再び旅に出たのだった。]