[ふと気が付けば、ほぼ空になっていた紅茶のカップに知らぬ間におかわりが注がれていた。
『猫足』と言っただろうか、適当に入ったが随分気前のいい店だ。
一口お茶を飲んだ後、再びチラシに視線を戻す。
チラシには、『あの衝撃の特別公演から〇〇か月、再びの感動を皆様に』と大きく書かれ、背景には、恐らく舞台の上なのだろう、黒い背景に、1人の役者が両腕を広げ、大きな声で笑顔で何かを告げているようなまさにその時の、上半身の写真が使われていた。
つい先ほど、街を歩いていた時に配られていたものを貰ったのだ。
自分はあまり演劇に興味がある方ではない。
それでも、この写真には何か惹かれるものがあった。
一体、どんな公演なんだろう。
この店は店員の声も響いてくるような賑やかさだ。
チラシも大通りでそれなりの人が受け取っていたようだし、ここの店員も何か知っているかもしれない。
試しに声を掛けてみよう。]