[直にカウンターに置かれた深紅のカクテル。
ヴァンパイアの牙の模造品が、
グラスの縁に引っ掛けられている。
一口啜ると、トマトの酸味が鼻に抜けた。
向き直ったルーリの肌艶は、店内の薄暗い
灯りの下でも明らかに良い。>>* 25]
お愉しみだったようですね。
[茨で囲まれた館と棺の中に引き籠もり、
死んだように眠り続けていた頃よりも。
格段に彼は、健康そうに見える>>120
眠れる美姫が棲んでいるに違いない、
今度探索に行こうか、そんな口コミが
まことしやかに流れた時期もあった。
美姫がわざわざ魑魅魍魎の跋扈する
街で眠りにつきますかね?とは、
水を差しそうなので黙っておいた。]