今より過去の話
[ことの始まりは些細なことだ。
軍内部に流通している、一時的な向精神薬…
ドラッグを投与したことに起因する。
もちろんそれらは軍の中では常用が認められた合法的な薬であり、作用も単なるナノマシン活性薬だ。
主に戦闘中や緊急時などに一時使用する事を想定されたものなのだが、恐怖心を抑えるために向精神薬としても投与が可能となっている。
特に害もないもののはず、だった。
悲劇は起きた。
むしろ悲劇というよりも、やらなければ起きなかった程度のものだが。
向精神薬としての作用を求めて常用していた者たちから、投与を迫られた女が拒否した結果、の顛末である。
――基地内での事故としては異例の、死者4名含む13人死傷。
4名の遺体は、何が誰のものか判別するのが困難を極めた。
身体の半分を損壊してもなお、回復が可能な医療技術がありながら、だ。
遺体がどのような状態であったかは伏せておくことにしよう。
それほどまでに酷い状態であったということだけ覚えておいてくれれば。]