[この女でさえ、普通の少女でしかなかった時期を持つ。
表舞台を離れて久しければ悪巧みをする表情を包み隠すこともなくなり、それを読み取った看守がわざと聞こえる様に溜息をついた。
阻止するでも、干渉する訳でもない。
言わば“巻き込まないで勝手にやってくれ”と言いたげな。
時代の転機を彩った知能犯達を実力行使で
どうにかしようという者は疾うにいない。
少なくとも、この階層の担当者に限っては。
子供が親を喜ばせる時の様な純粋な感情で、“面白いこと”を実行し続けるのがこの女の性。
愛ゆえに他者を害する件の少女とは案外近しい所に在るのかも知れない。]