現在・挨拶のあと
[オクリビに言われた「ズィーの国」について聞いている間のやり取りは割愛しよう。
みんなご存じのところだということもあるけれど、一番はフットマンの名誉のためだ。
なにせ、素っ頓狂な質問が多かった。応答した部下に「親父いま何歳だよ」と言わせたぐらいだ。
とりあえず、昨日表通りを歩いているときに聞こえてきた大声が、勧誘の声だったのは分かった。ならばよし。
気になったことを一通り確認し終えて通信を切ったら、フットマンはほったらかしにしていた自身の左の掌を改めて見た。オクリビと話している間、それから諜報部と通信している間、ちょっと間抜けだけど左手を心臓よりやや高い位置(オクリビと話している時は平行だった)に挙げていたから、血が必要以上に流れてはいないようだった。
本来なら圧迫止血するところだが、フットマンは腰についたポシェットのひとつから、瞬間接着剤を取り出した。
──誤解がないようにつけ足しておくと、“医療用”の“メトロポリス産”瞬間接着剤だ。]