────回想:あるシナリオの決行当日
[例の看守はこの日、差し入れ品の監査担当に駆り出されているようだった。
比較的自由に歩き回れる身分を逆手に取り、偽装した手紙を隠し持って独房を出る。
進んで女性に手を上げ、陰険な罰を加える様な男>>48の趣味など知れている。
だからなるべく可愛らしい装飾を施した。テーマは“加害者家族の小さな妹”。あの男が隅々まで舐め回す様にして検閲したくなるのを誘うデザインだ。
その封筒を、すれ違いざまに彼が運ぶワゴンにそっと忍ばせる。見慣れぬ品があればチェック漏れを疑い、すぐさま中身を確認するだろうから。
……幼い字で宛名の書かれた何の変哲もない封筒を、特段警戒もせずに開くことだろう。
甚振る為の材料に使おうと考えるのかも知れない。]