泥の紳士と顔合わせ
[機体を昇ってくる様子を、女はじっと眺める。
>>217人工音声の、ときおり耳障りなノイズも、この男から発されるものは何故か気にならない。
鉄と、錆とが、不思議とよく似あう男だ。女はそう感じていた。]
駆動音が大きいという事ですか?
振動は……確かに、これは大きいですから、揺れるのでしょうか。
中に乗っていて気持ちは悪くならないですか?
[ハンドライトの握りが、少し強くなったのを確認する。
まだ動いてはいない。動く様子ではない。
不信感はお互いに。
と言っても女の方は、相手が機体の所持者であることも
戦場に出る人間だという事も分かっている。
であれば、今気にすることは不意を突かれない事だけであって
それ以外の事は現状維持で問題がなかった。]