[確かに通常生活に支障はないものの、それらは今まで生きてきた闘いの日々とは、くらべものにもならないほどに緩やかだ。未だに体は音を消して近づく癖を残し人の足音や、呼吸の違いに耳を澄ませ今はなりを潜めているが、複眼は開花を待ち望み強化された手足は、力のままに振るう時を記憶している。ただ、戦場の高揚と共に、それを思うままに振るおうとすれば胎児の頃より埋め込まれたナノマシンが雄叫びをあげ、全てを食らいつくそうとすることもわかっていた。それ故に、女は無力感に幾度も襲われ続けている。]