[食事がよっぽど美味しかったのか、夢中になって食べている少女をフットマンは笑顔で見ていた。はたから見れば、親戚の大人と子供にも見えたかもしれない。
まさか、本当の親戚をフットマンが彼女から取り上げただなんて、フットマン自身も思うまい。
デザートまでしっかり食べる彼女に、甘いものはあまり好きではないのに、なんとなく頼んだ自分のデザートを、結局フットマンは彼女に押し付けた。
甘いものが好きではないから、一口すくって食べたら、フットマンはもういらなかった(普段はどうしているのか?甘いものが好きな奴をこれだけのために呼ぶんだよ)。
あげるためだけに頼んだのか、と言われればフットマンは何も言えなくなっただろう。野暮だから、明言してしまうのは避けるけれど。
それとして、彼女がそれを受け取ったかどうかは──フットマンは覚えていない。歳を取ると物覚えが悪くなってかなわない。]