トループ交流再開直前:メトロポリスの一角
[副官だったか部隊長だったか偵察兵の上官だったか。休戦連絡後に言い渡されたのはトループの偵察だった。トループ出身なことは周知の上だが、何故メトロポリスにやってきたのか知る者は当然一握りで、故に自身がトループに抱いている感情など考慮されるわけもない。
トループの現状視察、機人の中でも雑兵ではないランクの者を見かけたら報告を。国境を超えてトループよりも”向こう”に行こうとしている改人の通報を。これは停戦ではないのだろうかと流石の雑兵でも疑問に思うくらいには、相手への警戒が続いているかのような命令だったと思う。
『だってトループ出身なんでしょう?』
即ちそれは”里帰りするついでに仕事もしてこい”という命令か。それとも”トループのことは他よりも詳しいでしょう?”という暗黙の期待か。10年も前に棄てた国に、帰る場所などとうに無く、幼少期までしか暮らしていない国の地理など解るはずもなく。
それでも忠犬は浅く息を吐いて頷く]
りょうかい。
[建物を出た偵察兵の顔に浮かぶのは納得など何一つしていない表情だ。望んでいない里帰りが、間近に迫っている **]