─夜の女王のアリア・ページボーイと─
そっか。じゃあ私は、何も言わないよ。
[背に回した腕を下ろすと、姿勢を低くしたページボーイと視線が重なる。その覚悟の伝わる瞳は、きっとアリシアには見たことのないもので。
当たり前にあった幸せが犯されようとしているという実感と共に。
「喪いたくない」という決意がより強固なものとなっていく。]
大切にさせてくれないなんて、困ったページボーイね。
でも──ページボーイに背を預けるなんて、まるでドラマみたい。父様が見たらきっと喜ぶわ。
[そう言ってページボーイに笑いかける。
父はドラマが好きで、特に王道の熱い展開には目がなかったはずだ。現実を知っているからこそ、夢を見るし私が表で生きることを望んでいた父。
きっと私たちが主演で、背を預け合い拳を構える構図の扉絵なんか作ったら、大人気間違いなしの素晴らしい作品になるだろう。
もっとも、父がアリシアの戦う姿を見たがるか、という問には……まったく自信が無いのだけど。]