─ 回想:リトリコ ─
[ かつて幼い私達が学んだ学校に、
三年前に赴任してきた女性が居る。
リトリコという名の彼女は、私よりも年下なのに
ずっと落ち着いていて子供にも好かれていて。
時折私の店にも顔を出しては、
焼餅を幾つか買って行ってくれていた。>>90
こんな小さな村に都会から引っ越してくるだなんて
もしかしたら退屈ではなかろうかと、
最初のうちは村の良い所を紹介しようと
皆の店を回る小さなツアーを組んだりした事もあったか。]
都会よりも物は少ないかも知れないが…
この村を気に入ってくれたら嬉しいよ。
[ そう告げた私の心配をよそに、
店に訪れる彼女の表情の穏やかさは、
この村での生活に馴染んだことを示してくれていて。
そんな様子に、私はひっそり胸を撫で下ろしていたんだ。* ]