彼にお礼を伝えておいて。 まだ毎朝の髭剃りを欠かせない、 几帳面で素敵な若いあの彼にね。 貴男も。どうもありがとう。[カーテンの向こう側へと身体を一度引く。不用心にも鍵は開いたまま。少しの物音の後で、今度は腕だけが感謝の言葉と共にカーテンの切れ間から差し出される。その手が握っていたのは個包装の醤油煎餅。甘くないとは言えど、十分に嗜好品である。どうやらお駄賃(チップ)代わりの様子。**]