[その「タマゴサマ」の形状や画面などがはっきりと視認できずとも、携帯端末での通信という概念自体はヘローの常識の中にもあったから、ラピスには他にもここで出会えた「お客様」同士がいるのだろうとヘローが考えるには十分だった。
その相手との遣り取り故か否か、「えすえふ」>>252――SFエリアに向かう旨をここでラピスから伝えられた。その前に迷子になりそうなことについては……「タマゴサマ」の向こう側の誰かが(或いはレオーネくんが)助けになるかもしれなかった、が]
ちょっと待ってな。
[ヘローの手持ちには、携帯端末の類はない。出身国でのそれは国家権力による傍受の対象だった。
ただここで少しだけ(ある意味、今更のように)レオーネの説明>>4を思い出し、なんとか自分なりの想像力を働かせて――。
グローブを嵌めた手の中に、缶バッジの形をしたものがふたつ、出現する。]
通信機だ。良かったら持っていってくれ。
何かあれば、私にも連絡してくれていいから。
[ふたつのうちの一つ、黒地に小鳥のルリビタキの絵が描かれたバッジをラピスに差し出す。
(ちなみにだが、渡さなかった方のバッジの絵柄はシラサギだ)]