――自室(隙間時間)――
[ニュースを流しっ放しにしつつ、私は写真を額縁ごと大切そうにトランクに仕舞った。トランクは結構パンパンである。ドロシーの遺品だけでなく、読みたいと思った本が『宙色の鍵』以外にもいくつか入っていたから。
本のタイトルを指でなぞる。]
『恋空、恋雨、恋心』は、傑作でしたねえ。
[その恋愛小説は老夫婦が終世恋をしあう様が描かれた、ほんのりした作品で。読後にドロシーを思い出して甘酸っぱい気持ちになったものだ。]
恋のメカニズムを知りたがっていた彼女は、
どうしているでしょうね…。>>1:283