回想・困ったちゃん
[彼女との出会い。
>>246それは確か、戦線が一時沈静化したタイミングだったと思う。
いや、もしかしたらもっと前から知り合っていたかも。
テントからどれだけ離れても、負傷兵の呻きと恨み言が聞こえてきそうな静寂に周囲が包まれていた。
ざりざりと靴底で石だかコンクリートだか、もうわからないようなものを擦りながら、瓦礫の道を歩く。
ほとんど、自然らしい自然が残っていないその場所で、その背を見つけたように思う。
ギュルギュルと左右でバラバラに動いていた目の片方がその背を捉えると、すぐさまもう片方もそちらを向いて、両目がギュルリと揃って同じ方を見る。
死にかけのヴァルハラ兵を、メトロポリス軍の医療班の人間が治療している、ということだけは瞬時に見てわかった。
人工知能が即座にその背中をスキャンして、データベースと照合する。]