回想:囚人用図書室、バレンスと
[それでもハリコは、常に他の囚人たちから隔離されている訳では無い。
「他の囚人との会話も精神の健康維持には必要だろう?」との名目で(その真意はともかく)自由時間に交流スペースに赴くことも許可されていた。その間にハリコが他の囚人たちから暴行を受けることも(偶然か図られてかは別として)なかったため、この自由時間中の交流許可は現在でも続いている。
そしてこの日、ハリコが向かった先は図書室。
静かな読書環境の維持のためか、この監獄にあっては珍しく(?)、看守による暴力も暴言もたのしいサーカスもまず開催されない場所だった。見えない形での虐めはあったかもしれないが。
そんな場所だったから、ハリコも他の交流スペースより幾らか心穏やかに過ごしていた訳だったが]
っ、こんに……
[不意に掛けられた声にまず反射的に背中を震わせてから、読んでいた本を机上に置いて振り向いた。
まず目が行ったのは、皺の残ったシャツ。
それから、その顔を見上げて――]