[ふたりの逃避行は、長くはなかった。お互い生きる術を身に付けていなかったのだから。仕事をして金銭を稼いで。それでお嬢様に少しでも良い暮らしを。どこにでもある普通の暮らしだっただろうけれど、お嬢様はそれを楽しいと、笑ってくださった。時折淹れた、お屋敷から持ち出したお嬢様のお気に入りの紅茶を飲んでいるときが、一番悲しげだった。あの頃が、恋しいのだろうか。それを問うてもお嬢様は 「私、レイルの傍に居れて幸せ。」そう笑われるのでした。]