[それはいつかの看守(当時は確かに看守の制服を纏っているようだった>>143)だった“男”の顔!
ハリコは決して“彼”からは、これまで何一つ暴力を振るわれてこなかった。件の男の看守の魔の手から助けてくれさえした人だ。それにも関わらず、“男の看守”という認識がハリコの身に怯えを蘇らせた。
それでも、今いるこの場所が場所だったお陰か、咄嗟に逃げるまではしなかった。……逃げ出す背中に興奮して文字通りの追い打ちをかけてきた看守に出くわした経験の所為もあったが。]
こん、にちは。良い天気ですね。
[窓越しの光は薄雲のかかった鈍い色。日焼けの(暑い季節だったならば熱中症も)リスクを鑑みれば確かに「良い天気」とは言えたが……。
この時のハリコの震えた声での同意はあくまで、看守に逆らわない意思を示しただけに過ぎなかった。]
看守さんも、あたしに、御用ですか?
他の、男の人、みたいに―――…
[つい自分の方から口に出した問いを最後まで言い切れなかったのは、脳裏に浮かんだ言葉への拒否反応から。
強張った笑みのまま目を逸らし、自分の腕をそっと抱きしめる仕草から、看守という役職のみならず男性自体に対しての恐怖をハリコが抱いていることは容易に読み取れるだろう。]