独白
[人生とはわからないもので、選択ひとつ間違えるだけで、人間を180度違うものに変えてしまう。
俺にとってのターニングポイントは明らかに妻の病気と、治療という名の電脳化に関するあたりだ。あの日「妻を託す相手を間違えていなければ」。きっと今頃、電脳化に大賛成の幸せな暮らしを送っていたことだろう。
あの日、託した相手は史上最悪の相手だったことを、俺は知らなかった。甘い言葉で実験体を探す、金だけは持っている奴ら。妻は最初からただの実験動物で、彼らに「返す」気など到底なかったのだろう。
妻の身体と引き換えに振り込まれた金、家に送られた「妻だった何か」。その後聞いた、シンギュラリティの残党たちの悪評と、その「金の意味」。
その後入った組織の影響もある。電脳化は愚かな行為である、と。電脳化の無い世界が正しい世界なのだ、と。故に今の俺がある。]