………姉さん、好きだっただろうなあ。
[女の呟きは、はれて姉の好みを肯定するものだった。
そしてそれは『現実』であったのだけれど。
店であった時も思ってはいたのだが
あの手の軽い語り口の陰に潜む、清閑さの滲む声は、姉の聞きやすいとする声音だった。
そういった声質は、耳を撫でるに不快がないと
よく話をしていたものだと女は思い返す。
良い曲だと思うものの、涙は流れはしない。
感慨深いという気持ちはあるものの、胸を打つ衝動は訪れない。
ただ、手の中に残る一枚のチップ>>2:171に、想いを寄せるだけ。]