さあ、どうだろうな。 噂なんてものは所詮噂だ。[実際に手合わせしたわけでも、戦闘を見たわけでもない。この目で見るまでその真偽は、あくまでも噂の範疇を超えない。男はそういうと、またコウから毀れたある言葉に僅か首を傾げた。数少なくはあるが言葉を交わす中で、何度も「ありがとう」を聞く。コウの口癖なのだろう。でなければその言葉の意味は、男には理解しがたい。] 別に、礼を言われるようなことはしていない。[残念なことに、「どういたしまして」と言えるような思考回路が男にはなかった。]