[とはいえいきなり「よく見れば」なんて相手に言い出したのは失礼だった気もしたが、囚人の就いていた職業が看守側に周知されているならば「見れば相手の性別が判る」所以も察して貰えただろうか。
事実、目の前の女の元看守からは、彼女の家族――主に母と姉妹たちが“Harriko”のファンだという話も聞くことができた。]
本当ですか? あ、ありがとうございます。
……って、ご家族の方に、お伝えください。
[ついこう口にはしたが、元看守、つまり囚人の身分で、他の囚人からの話をきちんと塀の外に伝えることが叶うか否か。というより看守にせよ囚人にせよ“監獄の中のもの”である時点で、収監所外部への手紙は全て検閲の対象となる>>97。
それでもこの程度の(おそらく)他愛ない言伝くらいは、“Harriko”のファンだという彼女たちに届いてくれれば、とささやかに願ったのだ。]