―その日の晩・オーネストと―
――あれ、お客さん。
ずいぶん遅い時間に来たね、今日はおひとり?
[帰って来るや否や、女将さんに叱られて締めの作業を手伝っていた所に一人の来客があった。
つい先ほどみかけた男で>>207、オーネストという名前だったはずだ。ほのかに罪悪感を覚えながら、しかしそれを悟らせないよういつも通りの対応を意識する。]
いいお酒、いいお酒かあ。あ、そうだ――
[ちょうどいいものがある。いくら味がわかるといってもまだ子供の身だ、普段であれば女将に相談するところなのだが……なんの偶然か、最近お酒には少しだけ詳しかった。]
ハイこれ。甘くてちょっぴり辛い、最近人気のやつだよ。
特に常連さんに人気なの。安いし飲みやすい、それに味に深みがあるから高級感があるって評判。
[ちょっと待っててね、とお店の奥に戻る。女将さんに軽く声をかけ、しかし簡単なおつまみなら自分でも作れるからと言い残してキッチンに移動した。]