……お、れい?
兄さん、の。 パン。 ちいさい、こ。
[自分の手を見遣る。いつの間にか。兄に伸ばせなかった手は
兄から流れる血で汚れていたのを知る。
もう一度、彼を見る>>286]
(もしかして、君が兄の死の原因?
――否、違う。
そうであるならこの子もとっくに殺されている。
大事な人を喪なった己が喚き散らしたいのを
兄が零した優しさの欠片を傷つけるなと
理性が押し込めた言葉の刃で己の胸を今も刺し続けている。)
[受け取った花の茎が赤黒く染まる
笑おうとして、笑えない不格好な笑顔を
その子供はどう見たのだろう。]