─夜雀亭・フィジシャンとの日々─
[初めてのコンタクトを取って以来、彼と会話を交わす機会が増えた。
患者たちの人生と銘打った語り口は多岐に渡り、いつからか純粋に話を聞くのが楽しいと感じるようになっていた。それが本当に患者の話なのかは疑わしいものだったが、まさか聞いた話ですらなく直接記録を抜き取ったものだとはアリシアには想像しえないだろう。]
それでそれで、その後はどうなったの!?
[──と、つい食器を運ぶ手を止めて続きを促すアリシアの姿が時折見られたかもしれない。
ところでアリシアはフィジシャンの地位を高く見ていなかった。何しろ頻繁に様子を見に来るのだから、使い走りか、あるいはページボーイのように私を気にかける当人なのかと予想を浮かべ。
スラスラと人1人の経歴を語る姿から、末端構成員の管理でもしているのだろうと見ていた。それゆえ、その言葉の意味を理解するのに少しばかりの時間を要した。]
『アリス、もうすぐ雨が降るよ』