[ややあって、おみかんを味わうえりざべーとから「好きに動いて」と言われました。>>225
それで白薔薇は漸く、自分がなぜこのラウンジに行こうとしていたのかを思い出したのです。
先程挨拶を交わしたきりすれ違いの形になった若者のことも――今頃になってある心当たりを得たこともあって――気になってはいたのですが……。]
お気遣いありがとう、お嬢様。
そうだな、この宿にいられるのもほんの少しの間だという。
君のお言葉に甘えて、私も好きに動く、とするよ。
[動けなかったバラの苗が、今や「動く」のです! そのことに白薔薇は思わず自らくすっと笑いを零してしまいました。ツバサ様がふっと零す無邪気な笑顔に白薔薇の買い手の女の子も「ハートを撃ち抜かれていた」な、と思い出しながら。]
えりざべーと。
少しだけでも君と話せて、出会えて、良かった。
君も、どうかこの先で良い旅路を。
[とはいえ白薔薇はまだ暫くラウンジに留まりますし、ラウンジを出た後にもまたお宿の中で鉢合わせるかもしれませんが……。
もしかしたらこれが最後の遣り取りになるかもしれませんでしたから、白薔薇もまた、こんな別れの挨拶を返したのです。*]