ー 春・五月、校舎前花壇に供えられた花 ー
[下校時間、ケンに潰されたという花の確認をしようと、校舎前花壇へと向かうとき、誰かを見た気がした。>>231
それは他の生徒と同じように視界の端を横切っていく。
やけに明るい髪色だけがわずかな印象を残した。
花壇の確認をすると、確かにケンが言った通り、いくつかの花が潰れているのが分かる。
ダメそうなものを簡易的に間引き、本格的な株の処分と植え替えは手伝いのある後日にしようと考えたところで、違和感に目が止まる。
不自然に横たえられた花。潰されたパンジーの近くにあるだけに、誰かの意思で供えられたもののように感じた。
ふと、いつかの言葉が脳裏に甦る。>>293
どうやら自分の方が間違っていたらしい。>>230]
ふーん。
[飯島の視線は、今や荒らされた花壇より、供えられた花にのみ注がれていた。
暫く供えられた花を注視して、それから花壇の手入れに戻り、下校した。]