―回想/1年前・夏の終わり・九月/美術室―[台詞というものは、演技によりニュアンスすらまるで違ってしまったりもする。おどけて言うのか、真面目に言うのか。声のトーン、表情。ありとあらゆるものに表現の余地がある。松本の台詞は台本通りだ。しかし、読みの時ともリハの時とも異なる演技を行平は選択した。それを受けた女優、根岸寧子の小さな肩が僅か、震える>>204この時既に二人のせめぎ合いは始まっていたのだろうが。彼女の演技に熱がこもる]