はっ…無欲だねえ…
毎日望めばいいのによ。
やわこいパンが食いてえとか、
金銀財宝かき集めたいとか、
銃声を聞かずに散歩をしたいとかよ。
嫁さんのことばーっか。
そのくせ、嫁さんが『奪われた』自覚もねえ。
俺にはそっちの方が信じらんねえぜ
[と、唯一の望みを奪われた彼に対して言うのは、
馬鹿にしているわけではない。
彼の言葉を咀嚼して…やはり『分からない』となっているだけだ。
互いに感じる『分からない』。
けどそれは、互いを互いたらしめる確かなもの。
だから男は否定しない。
『電脳化の犠牲者を出さない』という彼の希望を否定しない]