― フィアと ―
[医務室での治療後、あちこちに包帯を巻いてテープを貼って、赤く染まったままの服のわたし。
着替えないとな、なんて小さく考えながら、黒髪を波風にたなびかせて。
そんな折、フィアの姿が見えた瞬間、わたしの頭の中は真っ白になった。
どうして此処に?
島に残ったんじゃなかったの?
思い直したの?
いつもの拘束具は?
様々な事が駆け巡り、伺うように名前を呼ばれ、
頭の中がごちゃごちゃになって――、
そうして手を取られ、わたしの手は彼女の頬に。>>300>>301
暖かい、生きてるんだ。
フィアの温もりを感じれば、それが涙で濡れた事に遅れて気付く。]