[カットの声が響くまでが永遠のようだった。
夢から醒めるように行平は眼をぱちくりし、肩を緩めた。ドッと疲労に包まれる。
スタッフが駆けより、飲み物やタオルを差し出したが断って。根岸に向き合う]
……根岸さん。いや、これはーー
素晴らしかったです、あなたの紡いだ台詞も、演技も。
……楽しかった。楽しかったなんて、監督に怒られるかもですけどね。でも、心から。
ありがとうございます。
[興奮醒めやらず、それだけ言うのが精一杯。
このまま彼女と死ぬまで演技を続けられたら、なんて頭に過った事を、行平は後に恥ずかしく思い出すのだがーーそれもまた良し]**