そうか。
ならばこの世界の写真でも撮れ。
意外といいぞ、この街も、この世界も。
[例えば城下町の活気溢れる姿。
石畳の道、川にかかるアーチ、雨上がりの空。
その板は写真をたくさん保有できる装置のようだから、そうすればいい。
忘れたい記憶があるのなら、数多の記憶で上書きしていくことが一番だ。]
それでも捨てられない記憶なら
心の片隅にしまっておくといい。
[それがきっと思い出というやつだから、と。
柄にもなくそんなことを話す顔は、少しだけ穏やかなものだったが
背を向けて歩き出していたから、コウには見えなかっただろう。]